横浜開港五十年祭 会場前

横浜開港五十年祭 会場前
「開港五十年紀念日前の數日間は順調なる梅雨期の天候として又奈如ともする能はざれども連日連夜に亘りて霧雨小止みもなく降り績きしに、幸にも其當日たる七月一日には朝來東海の一隅より日光を漏し漸次快晴となりしかば、税關新埋地の會場附近に於ては其装飾設備が雨天の爲めに稍や手遅れとなり居りしを多人數にて一斉に之れを施工したり。先づ會場の入口たる萬國橋前に大綠門を建設し其の萬國橋の上には橋の半月形鈎欄を包みて其儘に石垣に見立て城櫓を空中高く聳えしめ夜に入りては之れに無數の電光燭を點ずることとせしが、晝間は之れに又無數の籏差物を添附しある●が青嵐に吹かれて翩翻たる様は恰かも幕府時代の勢威と武士的精神の俤とを偲ばしむるの趣向面白く當日の來賓は勿論多數會員は先づ以て此飾り物の徒爾玩具にあらざるを首背せしなるべし。夫れより橋北一帯の道路は中古の雅致深き装飾を以てし式場入口前の道路は青葉紐を紅白幕張の上にあしらひ頗る賑かに見受けられたり。入口より左側なる史料展覧會前には各種の飲食物繪葉書等の賣店を以て飾られ雑然たる裡に自から秩序立ちたるを覺えたり。特に此の附近に列なれる假建物は郵便局の出張所にして電話四百四番を架設公衆の便に供し其外紀念スタンプ押捺の需にも應ずるの準備あり。」横浜開港五十年紀年帖
明治の横浜手彩色写真絵葉書

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