横浜開港五十年祭 住吉町
明治の横浜手彩色写真絵葉書
「住吉町の麗祭 同町は壹丁目より六丁目に至るまでの間に綠業にて包みたる高さ丈餘の白熱瓦斯燈二百六十基を樹立し綠葉紐を引き渡し其間に提燈を掲げ尚ほ柱の上は國旗と市の微章を染扱きたる旗を建て瓦斯燈の周圍に風鈴を附けしかば其音又頗る賑かにして殊の外人目を惹けり、其外に三個の居難子と踊屋䑓、大寓燈等を出だし又所々に造り庭等も設けたり、向ほ殊に目立ちしは六丁目の千歳樓の設備にかかる接待茶屋なり、その接待茶屋は先づ同樓脇の空地に間口四間奥行二間の造り庭を拵へ安政元年七月中の本牧村海岸に見立て潮に古びたる魚畚の上に米國海軍帽を乗せ傍らに洋刀一本を置きて米國武士を利かせ又一方には漁船の傍らに福草履と日本刀を置いて日本武士を利かせ遠見は横濱港にて米國軍艦七隻が孤形に投錨し居る趣きを現はしたり其隣に間ロ六間奥行三間の假装建物を設け左側を氷水の接待に右側を麥湯の接待所に宛たてるが此茶屋は極めて華麗に飾り附けたり殊にその外側に洗面所を設け水道を導き三個の洗面器を備ヘ又三尺に二尺九寸と云ふ大鏡を取附け何人でも汗と塵に苦む者は随意に手拭を絞り顔と洗ひ衣紋を繕ろひて隣りの接待茶屋に入り休憩することを得ると云ふ至れり盡せりの準備を為したり、又同樓は店頭に二間四方のトタン葺囃屋䑓を設け門から屋根にかけて綠葉と紅白の慢幕と國旗紅燈等にて満飾を施し其屋䑓にては雛妓連の踊を催し頗る非常なる賑ひを極めたり。」横浜開港五十年紀年帖
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